COVID-19 2020年8月-コロナ禍のパリ

 

 
 
33年に渡る日仏往復の生活、湾岸戦争やSARS、MARSなど様々な事があったけれど新型コロナウィルスほど世界中が同時に完全ストップしたことはなかった。いつもはタクシーやリムジン、乗用車で慌ただしい成田空港第一ターミナルへのアプローチは静まり返っている。見渡す限りひとっこ一人居ない・・・。

 

 

 
 
ターミナル内の売店も全てクローズ、唯一開いているコンビニのローソンとマクドナルドにニューカレドニアから乗り継ぎのフランス人がちらほら。

 

 

 
 
出発ロビーは水を打ったように静か、通常なら長蛇の列のパスポートコントロールも誰もいない。

 

 

 
 
出発便は私が乗るエールフランス一便のみのため、当然の事ながら搭乗ゲートは一つを残しすべてがクローズ。運航予定だったの他の便も搭乗者数が規定に満たずキャンセルが相次ぐ。免税店も全てクローズ、異様な光景に驚く。

 

 

 
 
21歳でパリに渡って以来こんなに長く日本に居たことも、飛行機に乗らなかった事もない・・・。高度が上がり雲海が見えて来ると何とも言えない解放感に包まれる。

 

 

 
 
久しぶりに降り立ったシャルル・ド・ゴール空港も成田同様ガラガラ、こちらも見渡す限り誰もいない・・・。

 

 

 
 
普段は世界中から到着する旅客でごった返すターンテーブルも全てストップ、毎回探すのに苦労するカートが現代アートのように並ぶ。私の荷物はどこから出て来るのだろう?

 

 

 
 
消毒用のジェルで手を拭い税関を抜けると「COVID-19」=コロナウィルスの文字が次々と目に飛び込んでくる。

 

 

 
 
税関のゲートをくぐり外に出ると野戦病院のような光景が広がり、コロナウィルスのパンデミックが世界的緊急事態であることを再認識する。防護服に身を包んだ医療関係者が世界中から到着する多種多様な旅客を相手にそれぞれの言語で対応、本人の国籍や居住国、乗り継ぎ後に入国する国による細かい規定に沿って検査を進める。日本のように入国者全てにPCR検査が義務付けられているわけではなく、基本は乗り継ぎの旅客がスムーズに最終目的地に入国できるようにするための検査。日本同様、パリでもPCR検査は相当の金額だけれどココでは無料、久しぶりのパリは以前とは全く違った光景で始まることに・・・。

 

 

 
 
PCR検査場を抜けいつもは長蛇の列のタクシー乗り場も閑散、そもそも到着便が殆ど無いのだから仕方がない。かろうじて勤務している案内のおじさんに、備え付けの電話で自らタクシーを呼ぶように指示される始末。ようやく来たタクシーは手作りのシールドが張り巡らされている。この装備なしで営業すると400ユーロの罰金とか、更に空からパトロールしていると言うから驚く。我が家が近ずいて来ると大げさではなく懐かしさで胸が震える。

 

 

 
 
8月のパリ、特に私の住むサンジェルマン地区は本当に静か。殆どのお店はヴァカンスでクローズ、それでも今年は何かが違う異様な雰囲気。タクシーから眺めるパリの街は明らかに変わってしまった。観光客がほとんど来ないこの期間を致し方なく改装に充てるホテルも多く我が家のお隣のホテルもクローズ、いつもはクラクションが響き渡るサンペール通りも静まり返っている。

 

 

   
 
 
ひと休みして久しぶりに街に出てみると懐かしいサンジェルマン・デ・プレ教会の塔が見えて来る。まだ夜が長いこの季節、抜けるように青い空をバックに静かに佇むその姿に救われる想い。

 

 

 
 
例年なら8月でも華やかなサンジェルマン大通りも今年は一変、サンジェルマンの顔ともいうべきレストラン「LIPPE」は肩と肩がぶつかり合う雰囲気が映画のワンシーンのよう、それこそが今では厳禁と止む無く8月いっぱいはクローズの貼り紙。老舗のカフェ、フロールもテラス席を拡張して何とか営業を続けているけれど、そもそも大通りが遥か遠くまで見渡せるほど人が居ないのだから・・・。

 

 

 
 
冷蔵庫に何もないのでまずはスーパーに立ち寄る。コロナの影響はここでも大きくまずは消毒用のジェル、普段は決して清潔とは言えないフランス人も必死でなすりつけている。陽気にお喋りしながらハムやチーズを切り分けてくれるスタンドは飛沫感染の温床とも言えるわけで当然クローズ。焼き立てのパンが並ぶケースも空っぽ、買えるのはパックに入った製品ばかり。

 

 

 
 
公共交通機関が感染拡大を広げると言うので自転車は大人気と聞いていたけれど、普段なら一台も無くなっている乗り合い自転車システムのベリブが殆ど残っている。他人と共有することに寛容なフランス人もさすがに警戒しているようで、皆さん「マイ自転車」。どこもかしこもクローズで物音ひとつ聞こえない不思議なサンジェルマンの街。

 

 

 
 
 
7月20日からカフェや商業施設内のマスク着用が義務化されたというパリ、その後8月10日からはパリ市内の指定された通りでも、15日からは大幅に拡大されて市内のほとんどの場所で義務化され違反者には135ユーロの罰金。車の中は「密」ではあるけれど一人なのでマスクはおろかフェースシールドすら要らないかと思いきや・・・、何とも厳重装備で出かける事に。

 

 

 
 
本当に久しぶりに来るポンピドーセンター、昨年から既に始まっていた大がかりな障害者用のエレベーター取り付け工事もコロナウィルスの影響で数か月ストップしていたとか。階上から一望する変わらないパリの街の美しさに癒される。

 

 

 
 
臨時のエントランスももちろん「ソーシャルディスタンス」、過去に展覧会のあったアーティストの名前を目印に並ぶおしゃれなアイディアはさすがだけれど、やっぱり誰も居ない・・・。夏のヴァカンスでパリを訪れる観光客が本当に少ない事を実感する。

 

 

 
 
 
ミュージアムショップにはさまざまなアーティストのグッズに交じってこんなマスクが!ソニア・ドローネー柄のマスク、ご本人もまさか自分の絵が後世マスクの柄になろうとは・・・、さぞや驚いているに違いない。

 

 

 
 
パーキングの出口にもミュージアムショップにも本当に至る所に消毒用のアルコールやジェルのスタンド、そしてマスク着用や手洗いのインディケーション。日本ほどスマホの電子決算が進んでいないパリでは無人キャッシャーでバーコード決済、支払いはクレジットカードという方法で現金を触らなくて済むように。喋らずには居られないフランスが無言の機械相手にブツブツ呟く光景もなかなか切ない。

 

 

 
 
チェコで開催されている主人の展覧会のためプラハに向かう。到着とは違うヨーロッパ航路のターミナルはさすがに人が居るだろうと思っていたけれど、エールフランスのチケッティングオフィスまでクローズ、再び水を打ったように静かな空港ロビー。普段はヨーロッパ各地からパリに来る観光客でごった返すターミナルFも静まり返っている。

 

 

 
 
パリ市内にいるかのように華やかなシャルル・ド・ゴール空港の免税店、エルメスやラデュレをはじめ殆どがココで揃うほど。しかし今は全てクローズ、シャッターが降りたブティックが延々と続く。

 

 

 
 
かろうじて開いているたった一軒の免税店も入店の際には係員がアルコールを手に、店内の至る所にマスク着用のパネル。香水のカウンターにはソーシャルディスタンスの注意書き、スウォッチのコーナーは1人ずつしか入れない・・・、世界中の人が通過するのだから致し方無いとは言え楽しくショッピングするには程遠い雰囲気。

 

 

 
 
成田空港のラウンジは全てクローズだったけれどシャルル・ド・ゴール空港のエールフランス・ラウンジはとりあえず開いていてほっとする。しかし、ミールサービスは全てパックされたクッキーやポテトチップス。いつもは席を確保するのが難しいほど大混雑のラウンジも見渡す限り誰も居ない。便数が少ないせいかフライトインフォメーションのパネルもOFF、普段は所狭しと機体が並ぶ駐機場も私が乗るエールフランス一機だけ。本当に世界は止まっているのだ・・・。

 

 

 
 
至る所に消毒用グッズが並ぶ空港、ジェルはもちろん紫外線殺菌マシンまで登場しさながら見本市のよう。雑誌や新聞のコーナーももちろん空っぽ、不特定多数が触れるモノは全て取り払われている。ブティックに並ぶエールフランスのロゴマークの入った消毒グッズも全てソールドアウト。

 

 

 
 
ようやく搭乗ゲートが開きロビーに上がるとココでも全てがソーシャルディスタンス。搭乗も後ろの席から順番にゾーンを区切って、普段は我先にと争うように乗り込む人々も今は居ない。巨大なメゾン・ド・ショコラのブティックがクローズしているのも印象的なターミナルF。

 

 

 
 
空港にこれだけ人が居ないのだからさぞやガラガラと思いきや意外にも機内はそれなりに混んでいる。空気中のウィルスキャッチャーのクレベリンボトルをバッグから取り出しセットアップ、1時間20分の飛行でプラハ・ヴァーツラフ・ハヴェル国際空港に到着。普段はヨーロッパの中でも人気の観光地プラハもやはりこの夏はコロナ・・・、静まり返っている。

 

 

 
 
 
チェコはヨーロッパの中でも比較的早くコロナウィルスの抑え込みに成功し、フランスのようにマスク着用の義務はないと聞いていたけれど・・・。やはり空港には至る所にマスクとソーシャルディスタンスのインディケーション。

 

 

 
 
 
アメリカのレンタカー会社「ハーツ」がコロナウィルスの感染拡大による都市のロックダウンで倒産したニュースを聞いて心配していたけれど、ヨーロッパのハーツはかろうじて健在のよう。しかし、パーキングには借り手の居ないハーツの車が延々と並びいつもとは全く違う光景に驚く。

 

 

 
 
  プラハから車で3時間、チェコ第2の都市ブルノに到着。3月にスタートの予定だった主人と研究室の展覧会がコロナの影響で3か月遅れで開催されている。ブルノは首都プラハよりオーストリアのウィーンに近い街、普段はパリからウィーンに飛びそこから車で1時間。しかし今回は邦人である私達がそもそもフランスからオーストリアに入国出来るのか?その後車で国境を越えるには不確定要素が多すぎる。邦人のフランスからチェコへの入国は可能と各方面に確認後、遠くとも同じチェコ内を移動した方が無難であろうとの判断。世界中が緊急事態であることを再び実感する。そんな中、誕生日を迎えるのも感慨深く、大げさではなく「祖国を遠く離れ・・・」と言う気分、記憶に残る一日になる。  

 

 

   
 
 
ブルノの街にある世界的建築家、ドイツ人の建築家ミース・ファンデル・ローエの「チューゲントハット邸」を訪れる。今回が3回目の見学だけれど最初に来た時はまだチェコ・スロバキアの時代、廃墟のようだったこの建物も2001年に世界遺産に登録されて以来ハイスピードで修復が進んだよう。父とウィーンから汽車に乗って国境を越えた思い出が蘇る。

 

 

 
 
チェコはコロナウィルスの抑え込みに成功しマスクを着けている人は居ない。見学者の中でマスクを着けているのはウィーンから来たというオーストリア人のご夫妻と私達だけ。東洋人と見ると一瞬敬遠されるのも初めての事、警戒するのも致し方なく「日本人です」と言うとほっと胸をなでおろす人も多い。彼らの頭の中では「東洋人―武漢―コロナウィルス」と思考回路が巡るのだろう。美しいミースの建物の前にももちろん消毒用ジェルのスタンド、心なしかモダンデザイン?何より驚くのは靴のカバーシステム。普段はシャワーキャップのような靴カバーを着けるところ、接触を避けるためビニールのフィルムに熱をかけ靴をラップするマシンに一人ずつ並ぶ。

 

 

 
 
プラハの市内はパリに比べると驚くほど人が多くいかにも夏のヴァカンスの雰囲気、しかし彼らは外国からの観光客ではなくチェコの人だという。近場で楽しもう、と言うのは今や世界共通の休暇の過ごし方。おとぎの国のようなプラハの街並みにいかにも不似合いな消毒用アルコールのスタンド、皆さん実にきちんと隅々まで消毒する様子は真面目なチェコの国民性を垣間見るよう。

 

 

 
 
いつになく厳戒態勢で臨んだチェコの日程を全てつつがなく終え空港に到着。昨年は主人のゼミ生の皆さんと歩いた長いアプローチ、今では前を行く人すらいない閑散とした空港。チェックイン時にフランスの滞在許可証や日本への帰国便の予約画面を要求されるのも初めての事、成田やパリの空港より更に人が居ない・・・。市内を賑わしていた観光客はやはり皆チェコの人なのだ。

 

 

 
 
全く人を見かけないままオートマシンの税関を抜けるとエールフランスのラウンジが開いている。そしてもちろん誰も居ない・・・。普段はごった返す人で良く見る事もなかったけれどなかなか素敵なラウンジ、ようやく少し寛いでノンアルコールのチェコビールで乾杯。

 

 

 
 
しかしそんなのんびりした気分も消毒用アルコールスタンドと様々な感染予防のインディケーションで再び現実に。全てのミールサービスはラップとパックで覆われている。

 

 

 
 
チェコがコロナウィルスの感染拡大防止に成功したのはひとえにこの国民性であろうと思うのはこんな細かい感染予防対策、全てのカトラリーが一つ一つラップされている。 そして物静かな語り口、喋らずには居られないラテンの国の人々とは根本的に感染リスクのレベルが違うのだ。西日が差す静かなラウンジでこの数か月に起きた世界的パンデミック、変わってしまった日常生活を想う。

 

 

   
 
 
 
通常なら深夜24時までオープンしている美術館、パレ・ド・トウキョウ。こちらもコロナの影響でカフェはクローズ、夜の外出を抑えるためか21時までに。現代アートのインスタレーションよろしく「マスク、ソーシャル・ディスタンス、手洗い」とお決まりのインディケーションがあちこちに。

 

 

 
 
 
消毒用のジェルやアルコールのスタンドがバス停にまで設置されているパリ市内、普段はサニタリーには無頓着とも言えるフランス人も結構真面目に、並んでまで手指の消毒に余念がない事にも驚く。スーパーのモノプリにはオリジナルのマスク、各スーパーがこぞってプライベートブランドのマスクを発売しているのだから既に「WITHコロナ」の生活が始まっていることを実感する。

 

 

 
 
オリジナルマスクの他にも消毒用グッズや使い捨ての不織布製マスクなど、感染予防グッズが今では大きな売り場を占めている。とりあえず入店したら手指の消毒をしてしばしグッズを眺めるのが「WITHコロナ」のお買い物リズム。

 

 

 
 
ようやく仕事も一段落、空港へ向かう。再びシールドが張り巡らされたタクシー、支払い用の小窓がカットされているのも手作り感満載で何ともほっとする。空港のトラッシュBOXも全てに「COVID-19」のインディケーション、どこまでも続くコロナの影響から逃れられない・・・。

 

 

 
 
アジア方面のロングフライトはさすがにビジネスの往来があるかと思いきや・・・、世界は止まっているのだ。ラウンジはかろうじて開いているものの全てにシールドやラップでぐるぐる巻き、ソーシャルディスタンス以前に誰も居ない。

 

 

 
 
かつては一日10便近いジャンボジェットが日仏を往来していたことが信じられないほど、閑散としたターミナルE。駐機場には私たちが乗るエールフランス一機のみ、離陸の順番を待つ滑走路ももちろん一機も居ない。機内に入ると本当にガラガラ、湾岸戦争の時を思い出す。消毒用のティシュと「COVID-19」に関する質問票が配られる。

 

 

   
 
 
離陸するといつものように空港上空を飛び徐々に高度を上げる機体、眼下には飛ぶ予定のないエールフランスの機体がオブジェのように延々と並ぶシュールな光景。

 

 

   
 
 
まだまだ鎖国状態の日本、コロナウィルスの抑え込みに成功したと言われるヴェトナムからの入国は許可されているようでヴェトナムエアーラインの機体と、使われることの無いエアポートリムジンが並ぶ不思議な光景に迎えられる。

 

 

 
 
着陸すると厚生労働省の成田空港検疫所のスタッフが待ち受けている。ニューカレドニアのトランジットの旅客を除くと数えるほどの乗客にPCR検査の説明、今後は名前ではなく全て番号で管理されるそう。以前は鼻から検体を採取する方法だった検査も今は唾液、防護服を着た医療スタッフにいざなわれ各ブースで採取する。

 

 

 
 
  全てが静かにシステマティック、これと言った混乱もなくスムーズに進むのは日本ならでは。無事、PCR検査の陰性証明を頂き入国審査を終える。いつもは世界中から到着する荷物でごった返すターンテーブルも一便しか到着しない非常事態、水を打ったように静かな税関に麻薬探知犬の声がこだまする。 page top

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